「看護師としてもっと自由に働きたい」「地域医療に貢献したい」――そんな思いを持つ方の中には、自分で訪問看護ステーションを開業したいと考えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、訪問看護ステーションの【法人化から立ち上げまでの具体的な手順】を、初めてでも分かるよう丁寧に解説します。必要な資格や資金、行政手続き、注意点までしっかりカバーしていますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 1. 訪問看護ステーション開業に必要な条件とは?
- 1.1. 1.人員基準|最低限そろえるべきスタッフ構成
- 1.2. 2.設備基準(事務所・物理的要件)
- 1.3. 3.運営基準|日々の体制とマニュアル整備も必須
- 1.4. 4.指定申請|正式な事業所として認可を受ける
- 2. 訪問看護ステーション開業に法人化は必要?
- 2.1. 訪問看護ステーションの法人化は「任意」だが、実務上はほぼ必須に近い理由
- 2.1.1. 信頼性の担保
- 2.1.2. 人材確保のしやすさ
- 2.1.3. 節税メリット
- 2.1.4. 事業承継や拡大への対応
- 2.2. 法人化のデメリット・注意点
- 2.3. 法人化するならどの形態?合同会社・株式会社・NPO法人の違い
- 2.4. 法人化の流れと注意点
- 2.5. 訪問看護ステーションの法人化の手続きは専門家に依頼するのが安心
- 3. お問い合わせ
訪問看護ステーション開業に必要な条件とは?
訪問看護ステーションを開業するには、都道府県知事又は指定都市・中核市の市長の指定を受ける必要があり、法律で定められた「人員基準・設備基準・運営基準」をすべて満たす必要があります。
以下、それぞれの基準をわかりやすく解説します。
1.人員基準|最低限そろえるべきスタッフ構成
まず最初に確認しておくべきなのが、「誰を配置すればよいか」という人員基準です。これは訪問看護ステーションを運営するうえで最も重要なポイントのひとつです。
- 管理者:保健師または看護師1名(常勤)
- 看護職員:常勤換算で2.5人以上(看護師または准看護師)
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士:必要に応じて配置(任意)
管理者は、訪問看護全体を統括する中心的な存在です。事業の運営だけでなく、スタッフ指導やサービスの質の管理まで担当するため、経験やマネジメント力が問われます。他職務と兼任することも可能ですが、現場を把握しながら業務を回せる余裕が必要です。
また、看護職員については「常勤換算で2.5人以上」が要件となります。これは非常勤職員の勤務時間を合算して計算する方式で、1日8時間・週5日勤務を1人とした場合、その合計が2.5人分以上あればOKという考え方です。
リハビリ職の配置は必須ではありませんが、訪問リハビリを行う場合はそれぞれの資格を持った職種が必要です。今後のサービス展開を見越して、早めに採用を検討する事業所も少なくありません。
参考:訪問看護ステーションを開設したい方|一般社団法人全国訪問看護事業協会
2.設備基準(事務所・物理的要件)
訪問看護は利用者宅に出向いて行うサービスですが、それでも必ず「事務所(拠点)」を持たなければなりません。
要件に合致するためには、以下の設備・スペースが必要になります。
- 事務スペース(机・パソコン・ファイル保管棚など)
- 相談スペース(来客対応や職員面談が可能なスペース)
- 休憩室(他スペースと兼用でも可)
- 手洗い場、トイレの完備
これらが最低限そろっていれば、マンションの一室でも、自宅の一部でも事務所として認められる可能性があります。ただし、施設の使用実態や継続性、衛生面などもチェックされるため、内覧(現地調査)の際に不備を指摘されないよう十分な準備が必要です。
なお、明確な面積基準はありませんが、実務上は「10㎡以上」がひとつの目安とされています。
3.運営基準|日々の体制とマニュアル整備も必須
開業に必要な条件は、人と物だけではありません。訪問看護事業として適切に運営するための仕組み(運営基準)も整えておく必要があります。
具体的には、以下のような内容が求められます。
- 訪問看護計画書・記録書の作成体制
- 苦情対応マニュアルや連絡体制の整備
- スタッフの勤務体制表・就業規則の整備
- 利用者との契約書・重要事項説明書の交付体制
- 個人情報保護方針・管理体制の確立
例えば、訪問看護計画書や記録書は、訪問ごとに記録を残すだけでなく、定期的な見直しが必要です。さらに、緊急時の対応体制(オンコールや24時間対応など)も整えておくことで、サービスの質と安全性が評価されやすくなります。
このような書類・マニュアル類は、開業直後の行政監査でも確認されるため、あらかじめテンプレートを用意したり、専門家(社労士・行政書士)と相談しながら整備するのがおすすめです。
4.指定申請|正式な事業所として認可を受ける
人員・設備・運営体制がすべて整ったら、最後のステップは「指定申請」です。これは、事業所を開設する地域を管轄する都道府県や保健所に対して行います。
申請時には、次のような書類が必要になります。
- 指定申請書一式
- 法人登記簿謄本(法人化している場合)
- 事務所の賃貸契約書または使用承諾書
- 管理者およびスタッフの資格証・履歴書
- 就業規則、運営規定、勤務体制表
- 苦情対応マニュアルや個人情報保護方針
- 財務計画書(事業計画・収支予測など)
提出後には書類審査や現地確認があり、スムーズにいけば1〜2か月ほどで指定通知が届きます。その後、指定番号が付与され、ようやく「訪問看護ステーション」として事業を開始できることになります。
開業スケジュールはこの手続き期間も見込んで逆算するのが鉄則です。焦らず、確実に準備を進めましょう。
参考リンク:
大阪府|訪問看護ステーション開設の手続き
介護サービス情報公表システム(全国対応)
訪問看護ステーション開業に法人化は必要?
「訪問看護ステーションを開業するには、法人化しないとダメなの?」
結論から言うと、法人化は必須ではありません。
訪問看護は、個人事業主としての開業も法律上は可能です。
ただし、実際の現場では多くのステーションが法人として運営されており、それにはいくつかの現実的な理由があります。
ここでは、法人化の必要性を検討するうえで押さえておくべきポイントと、実際の手続きについて詳しく解説します。この質問は、開業準備をしている多くの方が最初に抱える疑問のひとつです。
訪問看護ステーションの法人化は「任意」だが、実務上はほぼ必須に近い理由
訪問看護は、個人事業でも指定申請が可能です。実際、個人名義で立ち上げる事業所もゼロではありません。
しかし、多くのケースでは以下のような理由から法人化を選ぶ人が圧倒的に多く、むしろ「法人でなければ難しい」と考えるべき場面が多くなっています。
信頼性の担保
ケアマネジャーや医療機関、地域包括支援センターなどとの連携において、「法人格の有無」は非常に重視されます。特に初めて開業する人の場合、個人よりも法人の方が対外的な信頼を得やすく、スムーズに紹介や連携が進む傾向があります。
人材確保のしやすさ
看護師やリハビリ職員を雇う際、社会保険や雇用契約の整備が必要です。法人であればこれらを制度的に整えやすく、スタッフにも安心感を与えることができます。個人事業で雇用すると、社会保険加入義務が曖昧になることもあります。
節税メリット
利益が出るようになると、法人の方が税金面で有利になるケースが増えてきます。たとえば、役員報酬を支払うことで経費にできたり、所得分散が可能になったりと、柔軟な節税策が取れる点も大きな魅力です。
事業承継や拡大への対応
将来的に訪問看護ステーションを拡大したり、他の福祉事業と連携したり、第三者に事業を譲渡する可能性がある場合にも、法人の方が対応しやすくなります。
このように、制度的には「任意」でも、実務上は「法人化しておいた方が安心」というのが実情です。

当社では、訪問看護ステーションの法人化・開業支援・税務顧問も行っております。お気軽にお問合せくださいませ。
⇒訪問看護ステーション法人化のご相談はお気軽に
法人化のデメリット・注意点
もちろん、法人化すれば万能というわけではありません。以下のような注意点もあります。
- 設立費用がかかる(合同会社で6万円前後、株式会社で20万円前後)
- 設立後は法人住民税(赤字でも年間7万円〜)など、固定費が発生する
- 会計・税務処理が煩雑になり、税理士を必要とすることが多い
- 設立手続きや登記などの事務作業に時間がかかる
こうした点も踏まえ、「一人で小規模にスタートしたい」場合などは、あえて個人事業主として始めて後から法人化する選択肢もあります。ただしその場合も、設立後に指定事業者として再申請が必要になる点には注意が必要です。
法人化するならどの形態?合同会社・株式会社・NPO法人の違い
訪問看護ステーションを法人化する場合、代表的な法人形態は以下の3つです。
法人形態 | 設立コスト | 特徴 |
---|---|---|
株式会社 | 約20〜25万円 | 最も信頼性が高いが、設立・運営コストも高め。資金調達や事業拡大を考えるなら有利。 |
合同会社 | 約6〜10万円 | 設立が簡単で費用も安い。小規模経営に向いている。信頼性も一定あり、近年は利用者が増加。 |
NPO法人 | 約0〜数万円(自治体差あり) | 福祉事業に特化しやすいが、運営・監督が厳しく自由度が低い。寄付や助成金に強み。 |
通常は「合同会社」または「株式会社」での設立が多く見られます。信頼性と実務のバランスを考えるなら合同会社が選ばれるケースが多く、将来的に拡大を考えるなら株式会社を選択するのがよいでしょう。
法人化の流れと注意点
法人化の手続きは、次のようなステップで進みます。
- 事業計画の策定と定款の作成
どのような事業を行うか(訪問看護を含むことを明記)、収支の見通しなどを整理します。 - 法務局での登記申請
公証役場で定款の認証(株式会社の場合)を行い、登記を済ませて法人格を取得します。 - 税務署・年金事務所などへの届出
法人設立届出書や青色申告の申請、社会保険の加入手続きなど、複数の行政機関への手続きが必要になります。 - 訪問看護の指定申請書類への反映
法人化が完了したら、その登記簿謄本を添えて、訪問看護事業の指定申請を行うことができます。
登記内容に「訪問看護事業を行う旨(例:医療関連サービス、地域福祉支援など)」を含めておくことが、後の申請手続きをスムーズに進めるコツです。
訪問看護ステーションの法人化の手続きは専門家に依頼するのが安心
訪問看護ステーションを法人として立ち上げる場合、会社設立や税務署への届出、定款の作成など、法律や税制に関わる手続きが多数発生します。特に初めての法人設立となると、「何から始めればいいのか分からない」という声も少なくありません。
こうした場面では、税理士などの専門家に依頼することで、手続きの漏れやミスを防ぐことができ、結果的にスムーズな開業につながります。また、税務面でのアドバイスを受けることで、開業後の節税対策にも早い段階から取り組むことができます。
中でも、株式会社Financial Advisory Servicesは、法人化支援に特化した税理士法人で、訪問看護を含む医療・福祉業界にも強みがある点が特徴です。初回の無料相談も実施しており、「法人化すべきか迷っている」という段階からでも気軽に相談できます。
詳しくはこちら:株式会社Financial Advisory Services|法人化支援サービス

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投稿者プロフィール

- 公認会計士・株式会社Financial Advisory Servicese代表
- 株式会社Financial Advisory Servicesの代表として、M&AやIPO(株式上場)支援、経営コンサルティングをサービスラインとして提供しております。
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